井の外の蛙

アメリカ在住15年エンジニアから見た日本

少子化の話

日本の合計特殊出生率が1.20と過去最低を記録したそうで、少子高齢化が予想以上のペースで進んでいることがはっきりしてきました。

「日本人が消える」という民族の生存的な問題はさておき、少子高齢化の実質的な問題は労働力不足です。労働力が不足すると生活そのものができなくなる恐れがありますし、経済活動も停滞するので国家財政や社会保障が破綻する可能性もあります。

女性が子供を産んでも働きやすい環境を整えることにより子供が増えれば、現在と将来の労働力不足解消という一石二鳥になり得ます。しかし、環境を整えるにはそれを支えるだけの税収と労働力が必要です。ちょっとの増税も国民から総スカンを食らい(今回はなんとか医療保険に潜り込ませたようですが)、すでに保育士が不足している現状を考えると、簡単ではなさそうです。

さらには環境を整えるだけではどうにもならないこともあります。日本特有の「周囲の目」です。例えば育休に関しては制度が整い、取得を奨励する企業も増えてきているようですが、同僚に迷惑をかけているかもしれない、勤務評定に影響があるのでは、といった意識があるのでは取得率は上がりません。

さらには「社会の目」もあります。はっきり口に出す人は減ったかもしれませんが、子供は母親が育てるべき、心のこもった弁当を作るべき、みたいな無言の圧力があると、復職することに対して心理的な抵抗ができてしまいます。

アメリカの場合、連邦法で規定されている育休は両親とも年間12週間のみ、しかも無給。保証されているのは育休後同じポジションに戻れるということだけです。それでも、みんなお互い様という意識があるので遠慮なく取得します。子育てについても赤ちゃんのときからベビーシッターを雇うのは当たり前、「弁当」はジップロップにサンドイッチとリンゴを入れるだけだから数分で完了。日本と比べると仕事をしながら子育てをするのが簡単になっています。

いくら制度を整えても、互いに足を引っ張りあう社会から脱却しない限り、少子化傾向を逆転させるのは難しいのではないでしょうか。